日本の研究チームが、がん免疫療法の効果を高める腸内細菌を発見

国立がん研究センターなどの研究チームは、「オプジーボ」などのがん免疫療法薬の効果を高める腸内細菌を発見し、マウスを使った実験でその効果を確認しました。がん免疫療法薬は効果を発揮するものの、効果が現れるのは患者の20~30%程度とされています。この腸内細菌を活用すれば、ほとんどの患者に効果を発揮すると期待されます。

研究成果は7月15日、英国科学誌「ネイチャー」に掲載されました。

「オプジーボ」や「キイトルーダ」などのがん免疫療法薬は、免疫細胞の抑制機構を取り除くことでがん細胞への攻撃力を高めます。しかし、効果が現れるのは患者の20~30%程度とされています。世界各国では、薬を服用する前にどの患者に効果があるかを予測できる技術の開発や、薬効向上のための研究が進められています。

日本の研究チームはまず、がん免疫療法薬を使用した肺がんと胃がんの患者50人の糞便を調べた。その結果、がん免疫療法薬が効果を示した患者では、「ルミノコッカス科」の腸内細菌の割合が高いことがわかった。この腸内細菌を詳細に分析した結果、これまで知られていなかった新しいタイプの腸内細菌「YB328」を発見した。

YB328の機能と特性を調べるため、研究チームはがん免疫療法が効果を発揮しなかった患者の糞便をマウスに移植し、マウスにがん免疫療法とYB328を投与したところ、マウスの腫瘍が縮小することを確認したという。研究チームはYB328ががん免疫療法の効果を高める可能性があると考え、遺伝子解析や細胞実験を行い、その詳細なメカニズムを解明した。

その結果、YB328が免疫システムの司令塔とされる「樹状細胞」を刺激・活性化することが示された。樹状細胞は、がん細胞のマーカーを攻撃任務を担う免疫細胞に伝える働きを持っています。YB328によって活性化された樹状細胞は、がん組織の近傍へ遊走し、免疫効果を高める可能性があると言われています。

YB328は日本人の約20%の体内に存在すると報告されています。記者会見で、国立がん研究センター免疫変換研究分野の西川博善分野長は、「ゲノム配列の観点から、YB328は非常に安全です。がん免疫療法が効果を発揮しない患者への治療効果が期待できるだけでなく、既に治療効果が得られている患者への治療効果をさらに高めることも可能になります」と説明しました。国立がん研究センターが設立したスタートアップ企業を通じて実用化を目指す予定です。

腸内フローラと様々な疾患、老化、免疫、脳機能などとの関連性はますます明らかになりつつあり、国内外で活発に研究が行われています。 6月には、国立がん研究センターを含む国際研究チームが、日本人の大腸がんの半数が腸内細菌が産生する毒素に関連している可能性があると報告しました。7月には、英国ケンブリッジ大学が、腸内細菌の一部が有機フッ素化合物(PFAS)を吸収し、体内の毒素排出を促進する可能性があるとする研究を発表しました。

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